ノートパソコンの選び方
ノートパソコンの選び方
大学に入学して,初めてノートパソコンを買うという方も多いと思いますが,どのノートパソコンを買えば良いか分からないという方も多いと思いますので,ノートパソコン選びのポイントをまとめました.なお,このノートでは具体的なメーカーや機種名までは挙げませんので,ご了承ください.
MacにするかWindowsにするか
まず最初に悩むのは,MacにするかWindowsにするかだと思います.ノートパソコンの外観も,立ち上げたときの画面も,おしゃれなMacは魅力です.また,iPhoneを使っている人も多いと思いますので,ならばパソコンもMacにと考える人も多いと思います.どちらにするかは皆さんの自由だと思いますが,以下の点を抑えて決めてもらえたらと思います.
- なんでもググって解決するならMac
- 先生や友達に教えてもらいつつ使いたいならWindows
出版やアート・建築のデザインなど,特殊な用途で使うことが決まっていないのであれば,Windowsの方が無難だと思います.多くの大学の情報教育環境(PC教室)では,Windowsパソコンが導入されており,授業等もこれらのパソコンを使って行われます.そのため,Windowsに慣れておく方が,大学のパソコンもすぐに使えるようになると思います.また,先生方もWindows環境であれば,使い方を教えることができますが(Macユーザーの先生であっても,大学の環境がWindowsなので,嫌々ながらもWindowsの知識はある),Macの環境は全く分からない先生もいます.
また,友達とレポートや発表スライドなどのファイルのやり取りをすることも多いと思いますが,MacとWindowsでやりとりした場合には,ファイル名の文字がぐちゃぐちゃになったりすることもあります.文字コードという存在が,この問題を引き起こしているのですが,自己解決できないと,友達とのファイルのやり取りも難しいです.
ということで,何でもググって自分で解決してしまう心意気のある方はMacを選択して問題ないと思います.そうでない方は,Windowsの方が無難です.Mac信者になるには,それなりの修業が必要であることは肝に銘じておくべきです.
どのぐらいのサイズのノートパソコンにすべきか
次に悩むのは,ノートパソコンの大きさでしょう.授業で使うのに大学に持っていく必要があるのであれば,なるべく軽いノートパソコンにしたいところです.しかし,軽さと使いやすさには,トレードオフの関係があります.軽いノートパソコンは,画面サイズも小さく,ちゃちなキーボードしかついていないので,使いにくいです.一日に何時間も作業をしていると,目が疲れてきて,肩も凝ってしまいます.前かがみになってしまい,だんだん姿勢も悪くなっていきます.
どれだけ授業で持っていかないといけないかは,大学が始まってみないと分かりませんし,所属するゼミや研究室がどこになるかでも変わってきます.入学前の現状では,家で使う頻度の方が高いと想定されますので,ある程度の大きさのノートパソコンを買っておく方が無難だと思います.
- 大学に持っていく頻度が分かっていないなら,画面サイズ:12-14インチ,重量:1.2-1.5kg
ぐらいが良いと思います.個人的には,14インチあると使いやすいと思います.家にメインの大きめのノートパソコンやデスクトップパソコンがあるなら,上記よりも小さくて軽いノートパソコンでも良いと思います.
タブレットとしても使える方が良いか
最近のノートパソコンは,タブレットとしても使えるものが出ています.タブレットとして使えるものは,ソファーで寝転んで情報閲覧したり,スマホ感覚で操作できたりと便利です.ただ,パソコンは情報やコンテンツを閲覧(消費)するために使うというよりは,皆さんがそれらのクリエイター(生産者)になるために使うケースが多くなると思います.すなわち,レポートを書いたり,プレゼンテーションスライドを作ったり,プログラミングをしたりです.そのような環境では,マウスとキーボードを使うことが多くなってくると思います.また,Windows系のタブレットPCがタブレット端末として優れているかどうかは,私には分かりません(使ったことがないので).ソファーで寝転んだときに手にするのは,タブレットPCではなくスマホになる可能性が高いです.一般に,タブレットとしても使えるノートパソコンは,値段が高くなる傾向にあります.それほど使用頻度の高くないタブレット機能なのであれば,それに見合うだけのコストだとは思えません.ということで,
- よほどタブレットとして使いたいという希望がない限り,タブレット機能付きノートパソコンは不要
だと思います.
手書き入力できた方が良いか
上のタブレット機能にも関係してきますが,タブレット機能を備えているノートパソコンは,手書き入力できることを宣伝文句にしているものもあると思います.手書きは,アイディア創造ツールとして優れている面がありますが,Windowsのノートパソコン環境において,それに見合う環境が整備されているかというと,それは疑問です.手書き入力やパソコンでのお絵かき(アートとしてのグラフィック)には,液晶ペンタブの方が優れています.また,他のタブレット製品には,手書き入力に優れたものもあります.すなわち,
- 現時点で使うかどうかわからないのであれば,手書き入力は不要
だと思います.
バッテリー交換できた方が良いか
ノートパソコンはバッテリーで駆動しますが,長くノートパソコンを使っているとバッテリーが弱ってきて,長時間,使えなくなってきます.高価なノートパソコンの中には,バッテリーを簡単に交換できるものがあります.筆者も長く,バッテリー交換可能なノートパソコンを使ってきました.海外出張時に,飛行機内で電源供給が得られない時間が長く続くことがあったからです(鞄に予備バッテリーを入れてました).しかし,正直ノートパソコンの寿命は3年.長くても4年です.長く使っていると,バッテリーよりも先に,ノートパソコンが遅くなってきます.これは,中に入っているアプリケーションが増えてきたり,ノートパソコン内のファンが弱ってきたり,埃がつまってきたりと,いろいろ原因が考えられます.これらのメンテナンスをすれば(ソフト的には,クリーンインストールすれば,一気に解決します),動作速度の低下はましになりますが,正直そんなメンテナンスは面倒くさいです.それに,最近は,飛行機も新幹線も,カフェでも電源が提供されていることが多く,バッテリーを切り替えて使用するというケースは減っています.ということで,
- よほど長持ちさせたいという希望がない限り,バッテリー交換機能は不要
だと思います.
既製品か受注生産品か
パソコンは,家電量販店に並んでいるような対象生産の既製品と,主にネットで注文するような受注生産品の2種類が存在します.コモディティ化したノートパソコンみたいな製品ですと,特殊な機能やこだわりのデザインさえなければ,どちらで買っても大した差はありません.既製品は,SONY,パナソニック,NEC,富士通,シャープのようなブランドが販売しており,値段はやや高めです.一方,受注生産品は,DELLやLenovo,マウスコンピューターなどの大手から,名前も聞いたこともないようなPCショップまで様々ですが,概ね値段は低めです.既製品は,家電量販店で買って,すぐに持ち帰って使えますが,受注生産品は,通常2週間から1か月程度の期間を要します.もし,安くパソコンを手に入れたいのであれば,授業が始まる1か月前ぐらい(3月上旬には),注文を入れた方が良いです.受注生産品のメーカーですが,あまり小さいPCショップですと,品質のばらつきや保証に不安がありますので,大手の受注生産メーカーが良いと思います.したがって,
- 今すぐ使いたいか家電量販店経由でのサポートが欲しい場合は,既製品
- コスパ重視なら受注生産品.ただし,納期は1か月かかる
となります.
高性能なノートパソコンは必要か
ノートパソコンの性能については,注意が必要です.何十万円もするような高性能なノートパソコンは必要ないと思いますが,3万円程度のエントリーモデルとすらいえないような安価なノートパソコンを買うと,動作が遅くて,泣きを見ます.機械学習のような高度なプログラミング,3Dグラフィックスの処理,高度なゲーム機としての使用などの特殊な用途でない限りは,以下のスペックがあれば十分だと思います.なお,このスペックは,当研究室でデータサイエンスの実習を行ったり,実験用のWebアプリケーションを開発したりするのに,十分に耐えうるスペックです.一般的な人文社会系学部で使用する分には,十分すぎるスペックだと思います.
- CPU(パソコンの頭脳の部分):Intel Core-i5 か Core-i7,AMD Ryzen 5
- メモリ(パソコンのメインの記憶部分):8GB
- 外部記憶装置(アプリやデータを保存する部分):SSDというタイプの記憶装置で256GB以上
(2021年2月現在での必要スペック)
IntelかAMDか
昔はパソコンにIntel社製のCPUが入っているかどうかが,一種のステータスになっていましたが,今はどちらでも良いと思います.同一価格帯のPCとしては,IntelよりもAMD社製のCPUが入っているものの方が,性能が高いです.皆さんの親の世代に聞くと,「Intelじゃなくて大丈夫?」という人も多いと思いますが,私はここ3年程AMD社製のパソコンしか使っていませんが,困ったことは一度もありません.ということで,
- Intel社とAMD社どちらでも良いが,性能・コスパ的にはAMDが上
です.
Microsoft Officeは必要か
ノートパソコンを買うときには,Microsoft Officeが入っているものと入っていないものがあり,入っているものは2万円ぐらい高いと思いますが,多くの大学ではマイクロソフトとライセンス契約を結んでおり,学生であればMicrosoft Officeは無料でインストールできます.したがって,
- Microsoft Office付きの必要はない
です.
レガシーインタフェースは必要か
レガシーインタフェース?なんのこっちゃ?と思うかもしれませんが,これは昔のパソコンについているような端子(入出力インタフェース)が付いている方が良いかどうかです.今のノートパソコンは薄くておしゃれなものが多いので,昔のパソコンについたどでかい端子はなく,ちっちゃいType-Cと呼ばれる端子が一つだけ付いているものが多いです.外部のマウスやキーボード,モニター,USBメモリなどをつなぐときには,専用のアダプターを介してつなぎます.この専用のアダプターを常に持ち歩いていれば問題ないですが,結構忘れてしまったり,なくしてしまったりすることがあります.また,PCとの接続に,一つ余分なデバイスを経由させますので,接続の不具合で,プロジェクターに投影できなかったり,友達からファイルをもらうのにUSBメモリが認識できなかったりすることがあります.また,いくつかの機器を同時につなぎたいというケースもあると思いますが,おしゃれなノートパソコンには,小さいType-CのUSB端子が一つしかついていないことも多く,同時に使えないこともあります(もちろんアダプターに端子がいっぱいついていれば,たくさん機器をつなぐことはできます).したがって,レガシーインタフェースがついていると,何かと便利で安心です.具体的には,以下のレガシーインタフェースがついていると安心です.
- HDMI(外部モニターにつなげる端子)
- USB3.0 Type-C(外部機器をつなげる最新の端子)
- USB3.0(外部機器をつなげる最も一般的な端子)
- USB3.0 (Powered USB)(外部機器をつなげる最も一般的な端子で,常時通電しているもの.スマホの充電ができる)
- イヤホンジャック(アナログで音を出力する端子)
あと,以下のインタフェースが付いていると,重宝するときが来るかもしれませんが,なくても全く構いません.
- 4-in-1メディアカードリーダー(SDカードが読める端子)
おしゃれな薄型パソコンで大丈夫か
今のパソコンは,おしゃれで薄型のものが多いです.その対極にあるのは,PanasonicのLet’s noteで,分厚くておっさんが持っているイメージです.同じ買うならデザインの良いものを買いたいですが,おしゃれで薄型のものは,一点注意が必要です.まずは,熱の放熱が効率的に行えるようなデザインになっているかどうかです.薄いということは,その中部品がきっちり詰まっているということになりますので,互いが発生する熱が筐体内でたまってしまい,パソコンの動作が遅くなってしまうかもしれません.薄くても放熱効率の良いパソコンもありますので,一概にはなんとも言えませんが,薄型のパソコンを買うときには,ネットの口コミなども見て,動作が遅くならないか確認した方が良いと思います.また,上にも書きましたが,薄型のパソコンは,たいていレガシーインタフェースがありません.いざというときに,困ることがあるかもしれませんので,その点も注意が必要です.また,薄型のパソコンは,満員電車で押されたときに液晶が割れたという話も聞きます.毎日の取り扱いにも注意が必要です.ということで,
- 薄型のパソコンを買う場合は,レガシーインタフェースと放熱効率に注意せよ
となります.
どのくらいの価格帯のパソコンを買うべきか
筆者はコスパを重視しますので,上記のスペックのパソコンを買うとしたら,以下の価格帯に収めると思います(2021年2月現在).
- 税込み5万円
おわりに
一般的な人文社会系学部の学生が購入するノートパソコンとしては,上記のポイントを押さえておけば,問題ないと思います.とは言え,パソコンを今どきの使い方をしていない著者の価値観も入っていますので,今どきの使い方やスタイルにこだわりたい方は,それぞれのニーズに合ったパソコンを購入すればよいと思います.どうしてもMacが良いという方は,その信念に従ってもらえたらと思いますが,ちゃんと勉強して使いこなしてほしいと思います.いかにポイントをまとめておきます.
- ノートパソコンの寿命は3年
- 消耗品なので,特に理由のない限り,高価なパソコンは不要
- とはいえ,最低限のスペックは維持すべし
- 軽さよりも,使い勝手の方が大事
- タブレット機能は不要(多分...)
- MacとWindwos.迷うならWindows
- Mac信者になるなら,修行せよ
ほどほどに参考にしてください.