[論文紹介] ICWSM’18 The Gender Gap in Wikipedia Talk Pages
[論文紹介] ICWSM’18 The Gender Gap in Wikipedia Talk Pages
Benjamin Cabrera, Björn Ross, Marielle Dado, Maritta Heisel: The Gender Gap in Wikipedia Talk Pages, Proc. of ICWSM’18, pp. 572-575, 2018
Wikipediaのトークページ(各Wikipedia記事に設置されている投稿者による議論用のページ)において,投稿や返信において,ジェンダー(性別)の偏りがあることを示した論文.
RQ1: Wikipediaのトークページにおいて,男性と女性で投稿者数に差があるのか?また,カテゴリー(トピック)ごとに違いはあるのか?
RQ2: 投稿に対して,男性が投稿したものと,女性が投稿したもののそれぞれで,他の誰かから返信を受ける確率に違いはあるのか?
RQ3: ある投稿を行た投稿者の性別と,その投稿に返信をした人の性別に関連はあるのか?
の3点を調べている.
RQ1に対しては,55,383人のトークページのユーザのうち,男性は49,387人,女性は5,996人と,男性が多いことが分かった.カテゴリごとで調べると,こども(学),フェミニズム,ジェンダー研究において,女性が投稿したコメントの割合は12%, 15.8%, 20.1%と高かったが,それでも大幅に少ないことが分かった.
RQ2に対しては,トークページでは,掲示板のようにスレッド形式で投稿が提供されるが,そのスレッドのルート投稿に対して,女性が書いた場合と男性が書いた場合で,受け取るコメントの確率に違いがあるかどうかを調べた.その結果,女性が書いた投稿に対しては,ごくわずかに返信を受け取る確率が低いことを示している.
RQ3に対しては,女性(または男性)のユーザが書いたルート記事に対して,男性と女性のユーザがどの程度の確率で返信しているかを調べた.その結果,男性は男性に,女性は女性に返信する割合が高いことが示された.
この論文では,上記のような男女差が存在していることのみを示したが,その理由を調べることには至っていない.Wikipediaのサービスの設立経緯,男女のパーソナリティの違いやコミュニケーション指向の違いなど,文化的な観点で研究すると面白いと思われる.